佐野正博(2014)「原子力発電実用化前の原子力利用推進論」『技術史』第9号に関する補足・訂正情報

Posted by sano on 8月 04, 2014
文献情報

「公刊するからには、少しでも良いものにしたい」という思いから、佐野正博(2014)「原子力発電実用化前の原子力利用推進論 - 原子力利用に関する批判的検討のための資料紹介 Part 1」『技術史』第9号の刊行が当初予定(2012年5月)よりも2年間も遅れてしまい、関係者各位に大きなご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。
本Part1および近刊予定のPart2『技術史・技術論的視点から見た原子力発電関連文献ガイド』(227頁)の内容は、1年前にはほぼ出来上がってはいたのですが、より完成度の高いものにしようとした細部の修正作業に思わぬ時間がかかってしまいました。(来年度刊行予定の『原子力発電に関する推進論と反対論の論点整理』(仮題)というpart3とあわせて3部作として完結する予定です。)

下記に、Part1の詳細目次、全体の冒頭部(pp.2-8)、「第二次大戦前の日本における原子力関連記事」の冒頭部(pp.52-54)、「第二次世界大戦後~1950 年代前半期日本における原子力関連の事項および文献資料— 日本における原子力の産業的利用論および「平和」的利用論 (1) 1945 年8 月~1950 年代前半期の日本における原子力関連の記事や論文」の冒頭部(pp.103-108)を収録したサンプル版をアップしました。

当号の購入を希望される方は、技術史分科会まで連絡をお願いいたします。
定価は2,000円です。

住所:〒102-0093 東京都千代田区平河町2-13-1 嶋津ビル202号
日本科学史学会技術史分科会
FAX :03-3239-0545
e-mail: techne-wg @ freeml.com

Part1のポイント
Part1の本ガイドブック『原子力発電実用化前の原子力利用推進論』は、商業的利用開始前に展開されていた原子力(atomic power)の利用推進論を年代順に紹介したものです。20世紀初頭から1955年までの時期を対象とし、日本語および英語の新聞、雑誌、書籍における原子力の産業的利用論を収録しています。ただし日本に関しては、戦後~1955年までの国会での議論も対象としています。
 実用化の可能性が不明確な段階から新技術の革新性やその社会的意味を強調する議論が展開されるのは、原子力に限ったことではなく、一般的によく見られる社会的現象ですが、原子力利用の社会的意義を強調する議論も、原子力発電所など原子力の産業的実用化の可能性が明確になるずっと以前の20世紀初頭からなされています。
 なお本ガイドブックで紹介している言説の内で、技術論や技術史を専門とはしない方々にも興味を持たれるのではないかと私が考えているのは下記のような点です。
 
(1) 20世紀初頭から1920年代におけるTimes 、Washington Timesなどの新聞や、Popular Science Monthlyなどの通俗科学雑誌における原子力の「巨大さ」に関する初期の議論(pp.31-40)
 
(2) 原爆実用化直前の1940年代前半期におけるアメリカの大衆科学雑誌における原子力関連記事(pp.48-51)
 
(3) 被爆国日本における原子力発電の社会的受容を促進した「戦前」、「戦中」、「戦後初期」の議論

・エネルギー問題(燃料問題)解決との関連で原子力利用を位置づける議論が20世紀初頭から戦争中にかけて展開され続けてきたこと(pp.52-60)
・1944 – 45年前半の新聞および雑誌では、原子爆弾の強力さが従来型爆弾との比較ではなく、石炭や石油などの燃料との比較で紹介されていること(pp.103-104)
・1945年8月15日および16日の新聞において、原子爆弾の非人道性・残虐性と同時に、原子力の産業的利用の革命的意義を強調した記事が掲載されていること(pp.104-108)
・1940年代後半の戦後日本において原子力の平和的利用論がかなり数多く提唱されていること(中にはp.120, p.126, p.130, p.179の議論などのように原爆や水爆の「平和」的利用を論じる極端な議論も展開されていること)
 
(4) 「原子力の平和的利用」論は日本を含め、原爆の軍事的実用化と同時期になされていたこと、すなわち、アイゼンハワーによる1953年12月の国連演説における「Atoms for Peace」(平和のための原子力)論の提唱の数年前となる終戦直後から平和的利用論が社会的に展開されていたこと

・米国では原爆開発直後から、トルーマン米大統領の原爆投下直後の声明や1945年10月3日付け教書などに示されているように、原子力の軍事的実用化に対する巨額な投資の社会的正当化のためには、原子力発電など原子力の非-軍事的実用化=「平和」的利用という社会的「成果」を挙げる必要があったと推定されること
・敗戦国日本では敗戦直後から、科学・技術による平和日本の再建の重要な一環として、原子力の「平和」的利用=産業的利用が社会的に位置づけられていたこと。またそうした考え方の社会的受容の背景に、「東洋道徳、西洋芸術」論や「和魂洋才」論があったと推定されること。
 
 
誤植情報 2014.10.10
p.53に挙げた文献に収録ページ数に関する情報が欠落していました。上記のサンプル版では訂正してありますが、既にご購入済みの方は下記のように追加訂正をしておいて下さい。よろしくお願いいたします。

(訂正前)竹内時男(1921)「未来の動力」『アインシュタインと其の思想』内田老鶴圃, pp.
(訂正後)竹内時男(1921)「未来の動力」『アインシュタインと其の思想』内田老鶴圃, pp.85-86

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